小学生の頃、まだ年齢が1桁のときのはなし。
今ではめっきり見なくなってしまったが、90年代のテレビでは心霊写真とかUFO、超能力といったオカルト系の特番がよく放送されていた。
ユリ・ゲラーという超能力者がいる。
テレビで見るとふにゃふにゃとスプーンを曲げていた。
壊れた時計を直すといったようなこともしていた気がする。
わたしはユリ・ゲラーを見ていて、1ミリも「これはインチキなのではないか」という考えを持っていなかった。
超能力って凄いなあと本気で思っていた。
ある番組でユリ・ゲラーが「あなたにもわたしの超能力を分け与えましょう」みたいなことを言い、テレビの画面越しに自分と手を合わせろと指示してきた。
わたしはワクワクしながらユリ・ゲラーと手を合わせた後、自分で準備していたスプーンをさわってみた。
まだよく覚えていて、ごく普通のバーバパパの金属のスプーンだった。
そのスプーンを持って少し力を加えると、柄の部分がぐにゃぐにゃと半分に曲がった。
まったく固くなく、ちょいちょいと折り畳めたかんじだ。
曲がったスプーンを見て、家族と「おおおお?!?!」と騒いでから10秒くらい後、スプーンはまったく動かなくなった。
柄の部分が半分に曲がった状態のスプーンだけが残された。
当時はそうかこれが超能力かと納得し、その後特に何のアクションも取っていない。
それ以上でも以下でもない話だ。
誰に話してもあまり信じてくれないが、本当のことだ。
今思い返してみて、本当にユリゲラーの超能力というものがあの一瞬だけテレビ越しにわたしに伝わってきたのだろうか。
この事実は、超能力を「使った」と言えるのだろうか。「移った」と言うのだろうか。
てゆうか、超能力って、スプーンを曲げる能力のことなのか?
スプーン曲げでなく他にもっと有効活用できるシーンは無いのか?
そしてあの番組を見てユリゲラーとテレビ越しに手を合わせた全員が超能力を使ったのか?
当時TwitterなどのSNSがあれば分かったかもしれないが、今では永遠に分からない。
曲げたスプーンもしばらくは家にあったがいつの間にか無くなってしまった。
ユリゲラーのスプーン曲げは手品だと言う声も多い。
だとしたらわたしが曲げたスプーンはなんだったんだろう。
思い込みの力、催眠術のようなものだったのだろうか。
今更だけど、家族全員で同じ夢を見ていたとしたら怖い。